陰陽・表裏・内外・雌雄

黄帝内経素問

暑い…昨日から日中の暑さがきつく感じます。施術室の窓は南と西にあるので、常に日が当たる構造です。蒸し風呂みたいになります。冬の間は良かったんだけどなぁ。

さて、今回は日本語がとてもわかりづらいです…うまく意訳すらできなかった文章です。季節によって、時間によって病がどこにあるかを知る事、陰陽について知る事、それらを知ることが良い治療に繋がる、そんな内容です。

金匱真言論篇 第四(その2)

陰の中にもまた陰があり、陽の中にもまた陽がある、と言います。
朝の6時頃から正午12時にかけて、天の気は陽であり、さらに陽の中でも陽であります。正午12時から18時までの間は、天の気は陽ですが、陽から陰に向かっていく過程にあるので、陽の中でも陰となります。18時から24時にかけては、天の気は陰であり、また陰の中でもさらに陰となります。24時から6時までの間は、天の気は陰ですが、陽に向かっていく過程にあるので、陰の中でも陽となります。人間も、この法則に応じます。

人体全体の陰陽をざっくりわけると、外側は陽となり、内側は陰となります。肉体をわけると、背部は陽となり、腹部は陰となります。肉体の臓腑の陰陽は、蔵は陰となり、府は陽となります。肝、心、脾、肺、腎の五蔵は皆、陰となります。胆、胃、大腸、小腸、膀胱、三焦の六府は皆、陽となります。

陰中の陰、陽中の陽について知る必要があるというのは、どうしてなのでしょうか。それは、冬、病は陰にあり、夏は陽に、春は陰に、秋は陽にあるからです。どこに病があるのかを見定めて、鍼または砭石を用いて治療を施さなければなりません。


背部は陽であり、陽中の陽とは心にあたります。背部は陽であり、陽中の陰とは肺にあたります。腹部は陰であり、陰の中でも陰にあたるのは腎になります。腹部は陰であり、陰の中でも陽にあたるのは肝になります。腹部は陰であり、陰の中で最も陰にあたるのは脾になります。

これらはみな、陰陽、表裏、内外、雌雄の相互関係であり、また天の陰陽の法則に応じているのです。

黄帝が質問します。
「五蔵がそれぞれ四季に応じている、では四季それぞれがどう五臓と相対するのかという法則はありますか?」
岐白先生が応えます。
「あります。
例えば東方から発生する諸気(動植物が持つ気)は総じて青であり、五行で分類するところの木に属します。木の気は同じく木に属する肝に入ります。木の気は両目に通じて物をよく見えるようにし、肝に精を収めさせます。また木の症状は、非常に驚きやすくなるというものです。木に属する五味は酸味であり、その病の性質は草木であり、五畜は鶏、五穀では麦となります。木の季節である春に応じる惑星は、歳星(木星)です。これらを総じて、春の気は頭にあると考えます。木の五音は角、数は八です。これら相対する法則を理解すると、病が筋(肝)にあるということがわかります。病が筋にあるとき、病人が発する匂いは臊(あぶらくさい)です。

南方から発生する気は総じて赤であり、五行で分類するところの火に属します。火の気は同じく火に属する心に入ります。火の気は耳に通じて物をよく聞き、精を心に収めています。心は五臓の中心ですから、心が病むときには病は他の蔵にも及んでいます。火に属する五味は苦味であり、その病の性質は火であり(熱症状)、五畜は羊、五穀は黍(きび・粘り気のあるもの)です。火の季節(夏)に応じる天体は熒惑星です。これらの法則を良く理解すると、病が脈(心)にあるということがわかります。病が脈にあるとき、病人が発する五音は徴、五数は七、発する匂いは焦(こげくさい)です。


中央から発生する気は総じて黄であり、五行で分類するところの土です。土の気は同じく土に属する脾に入ります。土の気は口に通じて物の味を判別し、精を脾に収蔵しています。ですから脾を病むと、舌の付け根に症状が出ます。土に属する五味は甘味、症状は土の性質、五畜は牛、五穀は稷(きび)です。土の季節(長夏)に相対する惑星は鎮星です。これらの法則をよく理解すると、病が肌肉(脾)にあることがわかります。病人が発する音は宮、数は五、発する匂いは香(かんばしくさい)です。

西方から発生するは総じて白であり、白は五行で分類するところの金に属します。同じく金に属する肺に入ります。金の気は鼻に通じて匂いをよく嗅ぎ分け、精を肺に収めています。肺が病むと、背部に症状が出ます。金に属する五味は辛味、症状の性質は金(収斂)、五畜は馬、五穀は稲です。金の季節(秋)に対応する惑星は太白星です。これらの法則をよく理解すると、病が皮毛(肺)にあることがわかります。病人が発する音は商、数は九、発する匂いは腥(なまぐさい)です。

北方から発生するは総じて黒であり、黒は五行で分類するところの水に属し、同じく水に属する腎に入ります。水の気は二陰に通じて排泄と生殖を調整し、精を腎に収めます。腎が病むと、くぼみ(肉と肉の接合部)に症状が出ます。水に属する五味は鹹味(塩辛味)、病の性質は水、五畜は豚、五穀は豆です。黒の季節(冬)に対応する惑星は辰星です。これらの法則をよく理解すると、病が骨(腎)にあることがわかります。病人が発する音は羽、数は六、発する匂いは腐(くされくさい)です。

ですから良い治療家は、五臓六腑を慎重に観察して、病の順逆、陰陽、表裏、雌雄の道理を理解し、ことわりを心に刻み、精神を集中させます。そういう人物でなければこの道について教わってはならないし、またそれが真実でなければ教えを授けてもいけません。これらの理を良く知ることが、この道を理解したということになるのです。

疲れた…今回は本当にかなり入りづらい内容でした。内容というより、日本語訳がどうもすっきりしない感じで気持ちの悪さが残ります。特にこの最後の文章「故善為脉者、謹察五蔵六府、一逆一従、陰陽表裏雌雄之紀、蔵之心意.合心於精.非其人勿教.非其眞勿授.是謂得道。」の訳が、なにかしっくりきません。するりと入ってこない文章になっています(不勉強。)ですが永遠に置いておくわけにはいかないので、とりあえずまとめました。いつかするりと現代的な文章にすることができるといいなと思っています。
文章中の数についてですが、生成数と訳されています。治療に活用していると言う話は今まで聞いたことがありません。もしかすると易学や気学などに詳しいのかもしれません。

季節によって病の位置に違いがある事や、陰陽、表裏、内外、雌雄についての違いを理解して治療に当たる事などが書かれています。
東洋思想の素晴らしいところは、常に変化しているということ、固定されたものはないということを定義している点だと思っています。完全に分けられるものはなく、変化が止まるものもない。陽の中には常に少しの陰があって、陰の中には常に少しの陽が存在している。陽が極まる瞬間に、陰へと転嫁する。なんとなく、完璧じゃなくてもいいんやな、揺蕩っててもいいんやな、と思えます。完璧(どころ)じゃない自分を許容してもらえているような気がします。
常に自分が変化しているということ、良いも悪いも動いているということ、それらはなんとなく、大きな自然の中に身を置いているような、そんないい気分にさせてくれます。

できはさておき、今回はこれで終わりです。お疲れさまでした。