2025年の年末、今はもう誰も住んでいない祖父母の家から、古い壁掛け時計をもらってきました。
田舎では祖父母の住む家を「お部屋」、同じ敷地内にある長男一家が住む家を「母屋」と呼び分けています。祖父母が亡くなってのち、母屋に住む叔母が掃除や空気の入れ替えなど管理をしています。
叔母に時計をもらってもいいか、と尋ねると「どうぞどうぞ!欲しいものがあったらなんでも持って帰って」とのこと。
久々に足を踏み入れるお部屋は、ほとんど物が片付けられていて、残っているのは箪笥や椅子などの大きい家具が少し。でも子供の頃から見ていた羊の置物は、箪笥の棚にまだありました。多分親子であろう大小の、銀色をした二匹の羊。何でできているのかずっしり重く、立派な鈍器になりそうです。祖父は寅年、祖母は兎年なのに、なぜ羊なんだろう…子供の頃に抱いた疑問が、何年ぶりかに蘇ってきました。もはや答えを知る者はいません。
祖父の定位置の背面に、その時計は掛かっています。もちろん動いていません。椅子にのぼって慎重に壁から外します。ほこりがふわりと舞って、咳を誘います。持ちあげてみると、予想以上にずっしり重い。電池が腐って汁が広がっていないといいなぁ、と思います。機能を持たないオブジェにあまり興味がないので、もし電池を換えても動かなければ実家に放置しよう、と薄情な予定を立てつつ、車に乗せました。
帰宅すると、珍しいもの好きの父が早速時計に興味を持ちました。「どうせ動かんわぇ」とネガティブな発言をしつつ、頼んでもいないのに時計の蓋を開け、鍵のようなものを取り出し、ぜんまいを巻き始めます。…え?ぜんまい式なん?ぎりぎりときしむような音をさせながら巻き終え、ふりこをちょんとつつくと、ちくたくちくたく…10数年ぶりに、時計は動き始めました。しばらく眺めていましたが、長針も短針もきちんと連動して動いているようです。「どうせすぐ止まらぇ」父の度重なるネガティブ発言をよそに、時計は今も規則正しく時を刻んでいます。
振り子のぼんぼん時計は30分になるとひとつ、時間になるとその時刻の数だけ鐘を打ちます。1時なら1回、12時なら12回。夜中の12時に鐘を鳴らすなんてご近所迷惑、などという気づかいはありません。
なぜか寝つきが悪い、そんな夜にはやたらと存在感を増す古時計。いつまで頑張ってくれるものかわかりませんが、末永く動き続けて欲しいと願っています。



